「下半身を使えって、ずっと言われてきたんですけど」
第3回のレッスン冒頭、私はそう切り出した。
「意味はなんとなくわかるんですけど、どうすればいいかが……いまだにわからなくて」
林コーチが少し考えてから言った。
「じゃあ今日はそこをやりましょう。まず「下半身を使う」がどういうことか、身体で確認してみましょう」

■ まず「使えていない」ことを確認する
「最初に、意図的に下半身を固定して打ってみてください。足がコンクリートで固まってると想像しながら」
言われた通り、下半身を全く動かさずに打った。
「距離はどうでしたか?」
「…短い。なんか体が窮屈で」
「データ見てみましょう。ヘッドスピードが37m/sです。今の平均より4m/s落ちています」
「そんなに変わるんですか」
「変わります。次は逆に、思い切り左腰を切るように打ってみてください。足が地面を蹴ってる感覚で」
打ってみると、確かに飛んだ感じがした。でも、引っかかった。
「ヘッドスピードは43m/sに上がりました。でも、今度は腰が先に行きすぎて手が遅れましたね。それが引っかかりの原因です」
■ 「腰を回す」と「腰を切る」は違う
林コーチがホワイトボードに図を描き始めた。
「下半身の動きには二つのフェーズがあります。バックスイングで右膝が粘る。ダウンスイングで左に体重が移動しながら、腰がターン(回転)する。これです」
「……腰は切るんじゃなくて?」
「よく言われる『腰を切れ』は、正確には『腰を積極的に回転させろ』という意味です。でも多くの人は腰を『スライドさせて逃がす』動きをしてしまう。これが当たらない原因になる」
自分がまさにそうだった。「切る」という言葉で、腰を横に逃がしていた。
■ ドリルで「感覚」をつかむ
「左足の外側に棒(アライメントロッド)を置いて、それ以上左にスライドしないようにして打ってみてください」
制約をつけると、腰が横にスライドできなくなる。自然に、回転を使わざるを得ない。
「これで打てる気がしないんですが……」
「最初はそう感じると思います。でも力が逃げなくなるので、慣れると飛距離が上がります」
おそるおそる打つと、振り遅れてフェースが開いた球になった。
「今はまだ慣れていないので、こうなります。でもデータを見てください。クラブパスがマイナス1度になってますよね。腰が回転するようになると、パスが自然にニュートラルに近づくんです」
確かに、先週まで-4〜-5度だったクラブパスが-1度になっていた。

■ スポーツでの「身体の感覚」を借りる
「テニスやった経験ありますか?」
「高校でちょっとだけ」
「じゃあサーブするときの感覚、覚えてますか。打つ前に体が少しねじられて、リリースの瞬間に体全体が解放される感じ」
「…なんとなく」
「ゴルフも一緒です。バックスイングは『ためる』。ダウンスイングは『解放する』。下半身はその解放のトリガーです」
その言葉で、少し掴めた気がした。
「一回、素振りで腰の動きだけを意識して振ってみてください。クラブは打席の横に置いて、手は腰に当てて」
素振りをすると、林コーチが後ろから腰を軽く補助してくれた。「そう、そのタイミングです。今の感覚、覚えておいてください」

■ 帰り際、こんな話をした
「3回レッスンを受けて、思ったことがあるんですが」
「どうぞ」
「なんか……ゴルフを『感覚で解決しようとしてた』んだなって気がして」
「多くの方がそうです。感覚は嘘をつきます。特に長年癖がついている動きは、正しい動きが間違っていると感じることもある。データと映像で客観視することで、初めて自分のスイングが見えてきます」
次回は、この動きをコースでも使えるようにするための練習に入るという。シミュレーターのコースも使ってみる予定だと聞いた。
(連載 第3話 / 全5話)