「先週から、レンジで200球以上打ちました」

林コーチに会うなり、そう報告した。家に帰ってから毎日レンジに通い、グリップを意識して打ち続けた。最初の3日間は感触が良かった。スライス幅が減り、つかまった球が出るようになっていた。

でも5日目から、また少し崩れてきた。

「崩れたというのは、スライスが戻った感じですか?それとも別の球が出てきた?」

「スライスは減ったんですが……今度は左に引っかかる球が混ざり始めて」

「なるほど。それは予想通りです」

林コーチが少し微笑んだ。


ドライビングレンジでの練習風景

■「直し方の順番を間違えると、こうなる」

TrackManの前に立ち、まず10球打つ。確かに先週よりスライスは減っている。でも、3球に1球くらいの割合で左に引っかかっていた。

「データ見てみましょう」

フェースアングルは先週の+7度から+1度まで改善されていた。グリップの修正が効いている。

「問題はここです。クラブパスを見てください。先週は-3度のアウトサイドインでしたが、今日は-5度になっています」

「……悪化してる?」

「そうです。フェースが閉じてきたことで、もともとあったアウトサイドインがより意識されてしまった。体が”フェースで合わせようとする”代わりに、パスで帳尻を合わせようとするのは、よくある現象なんです」

グリップを変えたことで、体が無意識に別の補正を始めた。それが左への引っかかりを生んでいた。


■「本当の原因」はアドレスにあった

「今日はアドレスから直しましょう。実はここが根本的な問題だと思っています」

林コーチがアドレスのチェックを始めた。鏡の前に立たされ、正面・横から確認する。

「肩のラインを見てください。ターゲットに対して、どれくらい開いてますか?」

「……5〜10度くらい、開いてる気がします」

「実測で12度です。これがあるとダウンスイングでクラブがアウトから入りやすくなります。これがクラブパスの問題の根本にある」

アドレスを修正するために、林コーチはあるドリルを教えてくれた。スティック(アライメントロッド)を使って、肩・腰・つま先のラインを揃える練習だ。

「これ、毎回の練習の最初の5分でやってみてください。感覚が狂いやすい部分なので」


スイング改善のフォーム確認

■ 肩を揃えたら、数字が変わった

アドレスを直して10球打ってみた。

クラブパスが-5度から-1度に改善された。フェースアングルも+1度で安定している。

「今の5球、どうでしたか?」

「……なんか、飛んでる感じがします。力んでないのに、前に出てる」

「それ正解です。体が正しい方向を向くと、スイング中の余計な補正が減るんです。結果、クラブがシンプルに動くようになる」

先週よりも確実に良くなっている。でも同時に、自分がいかに「感覚に頼りすぎていたか」もわかってきた。

「次回は下半身の動きを見ていきましょう。アドレスが安定してきたら、次は体の使い方です」


パッティンググリーンと整備されたコース

■ レッスンの外で気づいたこと

帰り道、ふと思った。

この2回のレッスンで学んだのは、「直す順番がある」ということだ。グリップを直してもアドレスが崩れていれば、別の問題が出る。アドレスを直したら、次は体の動き。一つずつ積み上げていくしかない。

3年間「スライスを直そう」と闇雲に打ち続けていた自分は、何も積み上げていなかったのかもしれない。

次回は下半身の使い方。林コーチから「アライメントロッドを買っておいてください」と宿題をもらった。

(連載 第2話 / 全5話)