スコットランド西海岸のエアシャーに位置するターンベリーは、その立地だけで訪れる価値がある。コースに立てば、眼前にはアイリッシュ海が広がり、沖合には火山岩の奇岩「アイルサ・クレイグ」が孤島のようにそびえ立つ。晴れた日にはアイルランドの海岸線まで見通せるという。そしてコースの岬に立つ白い灯台は、長年このコースのシンボルとして世界中のゴルフファンに知られている。絶景とドラマが重なるこの地は、単なる名コースを超えた「巡礼地」となっている。

戦場から甦ったコースの歴史

ターンベリーの歴史は複雑な運命を持つ。コースが最初に開設されたのは1900年代初頭、グラスゴー・アンド・サウスウエスタン鉄道が開発したリゾート計画の一環としてだ。隣接するターンベリーホテルとともに、富裕層のゴルフリゾートとして整備された。

しかしこのコースは二度の世界大戦によって深刻な打撃を受けた。第一次世界大戦では英国空軍の飛行場として接収され、コースの多くが滑走路と格納庫に転用された。第二次世界大戦でも再び軍に接収され、コンクリートで舗装された滑走路がコースを破壊した。戦後、コースを復元しようという動きが起こり、フランク・ペニンクによって現在のコースが再設計された。廃墟同然の状態から甦ったこのコースが、後に全英オープンの舞台となるのだから、ゴルフの歴史は時に劇的だ。

現在のアイルサコースは1994年と2016年にさらなる改修が施され、特に2016年の全英オープン開催に向けた大規模なリノベーションで、9番ホール付近の形状が現代のトーナメントに適した姿に生まれ変わった。

アイルサコースの設計と特徴

ターンベリーのメインコースであるアイルサコースは、海岸線に沿う前半9ホールと内陸部の後半9ホールで構成される。前半の9ホール、特に4番から11番にかけては海沿いを走り、波しぶきが届くほどの崖際のホールが連続する。これはゴルフコースの中でも最も迫力ある景観の一つと評されている。

象徴的なのが9番ホールだ。岬の先端に向かって打ち下ろすこのホール、ティーグラウンドはあの白い灯台のすぐ隣に設けられている。フェアウェイの左側は海に切れ落ちた崖、正面にはアイルサ・クレイグ島、そして灯台が同じフレームに収まるこの景観は「ゴルフで最も美しい一打を放つ場所」としてたびたび紹介される。

コースはリンクスの性格を色濃く持ち、風の影響が非常に大きい。無風のコンディションでは攻略可能に見えても、エアシャー特有の変わりやすい海風が吹き荒れると一変する。フェアウェイは起伏があり、コントロールショットが求められる。グリーンは速く、リンクス特有の受けグリーンではなく逆勾配の部分も多いため、ピンに正確に近づけないとボギーを免れない。

デュエル・イン・ザ・サン——ゴルフ史上最大の名勝負

ターンベリーの名を永遠にゴルフ史に刻んだのが、1977年の全英オープンだ。この大会は「デュエル・イン・ザ・サン(太陽の下での決闘)」と呼ばれ、ゴルフ史上最大のライバル対決として今も語り継がれる。

当時37歳のジャック・ニクラウスと27歳のトム・ワトソン。この二人の世界最高峰のゴルファーが、最終日に2サムで並んで回り、互いに一歩も引かない死闘を演じた。最終的にワトソンが65、ニクラウスが66というスコアを叩き出し、3位に11打差をつけてワトソンが優勝。この大会の特筆すべき点は、2位のニクラウスも通常の大会であれば楽々優勝できるスコアを記録していたという事実だ。

最終18番ホールでニクラウスが長距離バーディパットを沈めると、ワトソンは動じることなく同じくバーディを奪い返してウイニングパットを沈めた。その後ニクラウスがワトソンを抱き寄せ「あなたは素晴らしいゴルフをやりきった。だが私も最善を尽くした」と告げた場面は、スポーツマンシップの模範として語り継がれている。

ターンベリーが生んだもう一つの伝説

2009年の全英オープンでは別の歴史が作られた。59歳のトム・ワトソンが最終日まで首位を走り続け、優勝寸前まで迫った。ウィンブルドン最終日のような静けさと緊張感の中、最終18番でワトソンのアプローチが奥のラフに外れ、最終的にプレーオフでスチュワート・シンクに敗れた。勝利は逃したものの、59歳でのあの戦いぶりはゴルフという競技が持つ「年齢を超えた可能性」を世界に示した夜だった。

ゴルファーが知っておくべき理由

ターンベリーは現在「トランプ・ターンベリー」として運営されており、2014年にドナルド・トランプが買収した後、大規模なリノベーションが行われた。賛否はあるが、コースとホテルの施設は世界最高水準に整備されている。

訪れるなら4〜9月が推奨される。スコットランドの夏は日照時間が長く、午後10時近くまで明るいため、夕暮れのラウンドという贅沢な体験が可能だ。特に夕陽がアイルサ・クレイグ島を染める時間帯にコース上にいることができれば、それはゴルフという枠を超えた体験になる。

デュエル・イン・ザ・サンの舞台を自分の足で歩き、灯台の横からアイルサ・クレイグ目がけてティーショットを放つ。その一打は、ゴルフが持つロマンの核心部分に触れることができる。