アメリカゴルフ発展の礎を築いた場所

スコットランド、イングランド、アイルランドのコースがリンクスという地形と風という自然条件によってゴルフの原形を作ったとすれば、アメリカ国内でゴルフの土台を築いた場所として真っ先に名前の挙がるのがパインハーストだ。

ノースカロライナ州の中央部、広大な松林に囲まれた小さな村パインハーストは、1895年にボストンの実業家ジェームズ・ウォーカー・ティフトによって計画的に開発が始められた保養地だ。当初は健康リゾートとして設計されたこの地に、1897年に9ホールのゴルフコースが初めて設けられた。その後急速にゴルフリゾートとしての性格を強め、今では9つのコースを有する世界有数のゴルフリゾートへと成長している。

中心的存在であるNo.2コースの設計を担ったのは、スコットランド出身でアメリカに渡ってきたドナルド・ロスだ。ロスは1900年代初頭にパインハーストのヘッドプロとなり、以降の生涯をかけてNo.2コースを磨き続けた。彼はアメリカ全土で400以上のコースを設計したとされる「アメリカコース設計の父」であるが、その最高傑作が自らのホームコースであるパインハースト・No.2だというのは、ゴルフの歴史における美しい逸話だ。

タートルバック・グリーン——ロスが生み出した罰の哲学

パインハースト・No.2を語るうえで最も重要なキーワードは「タートルバック・グリーン(Turtle Back Green)」だ。日本語では「カメの甲羅型グリーン」と訳されることもあるが、その形状は名前の通り、中央が高く縁に向かって下がるドーム状の起伏を持っている。

この設計哲学は単純にして残酷だ。ピンを直接狙ったショットがわずかに外れると、ボールはグリーン外へと転がり落ちていく。ピンに近づけすぎてもリスクがあり、ドーム頂上付近にあるカップを狙う際はどの方向からのアプローチも滑り台のように外れる危険を伴う。「グリーンを外すと罰せられる」のは当然として、「ピンに近づきすぎても罰せられる」という逆説がロスの設計の真骨頂だ。

グリーン手前には深く刻まれた「ビーレッジ」(ワイヤーグラスを中心とした粗い植生地帯)が広がっており、グリーンを外れたボールが転がり込むと難しいライから次のショットを打つことになる。フェアウェイが広く見え、バンカーも多くないNo.2だが、グリーン周辺の設計がすべての難しさを担っているといってよい。

サンドスクラッフル——松林の大地が作る風景

パインハーストの独特な景観要素の一つが「サンドスクラッフル」だ。フェアウェイとラフの間に広がる砂地と粗い植生のエリアで、松の砂地土壌を活かした自然の一部だ。2011年の大規模改修(ベン・クレンショーとビル・コーレスによる設計)では、かつての洋芝ラフが除去され、このサンドスクラッフルが意図的に復元・拡張された。

この改修により、コースはよりオリジナルのロス設計に近いビジュアルを取り戻した。空から見ると褐色の砂地と松林が織り成すパターンが美しく、そのワイルドな自然の質感はフロリダのリゾートコースとも、スコットランドのリンクスとも異なるアメリカ南部特有の美を持つ。サンドスクラッフルはペナルティエリアではなく、プレー可能エリアだが、均一でないライからのショットは技術を要する。

全米オープン——男女同年開催という歴史的出来事

パインハースト・No.2は全米オープン(全米男子オープン)の開催地として5度使用されており、1999年、2005年、2014年の開催が特に記憶されている。

なかでも2014年は全米オープン史に残る年となった。男子全米オープンと全米女子オープンが同じコース(No.2)で同じ年(わずか2週間違い)に開催されたのだ。同一コースで男女の全米オープンが同年開催されたのは史上初のことであり、以後もその例はない。

男子大会ではマーティン・カイマーが圧倒的なスコアで優勝し、女子大会ではミッシェル・ウィーが初のメジャータイトルを獲得した。二つの大会を通じて、No.2のタートルバックグリーンは男女問わず世界最高峰のプレーヤーたちを苦しめ、そのコース設計の普遍的な難しさを世界に示した。

1999年の全米オープンでは最終日、最終ホールでペイン・スチュワートがプレーオフを制して優勝したが、その年の秋にスチュワートは飛行機事故で命を落とした。パインハースト・No.2の18番グリーン脇には彼のブロンズ像が設置されており、その年の優勝を讃えるとともにゴルフ界が失った才能を悼んでいる。

アメリカゴルフへの巡礼として

パインハーストはリゾートエリア全体がゴルフ中心に設計されており、複数日のステイとラウンドが最も楽しみ方として理にかなっている。9つのコースには各時代を代表する設計者が手を加えており、全体をまとめて「ゴルフの学習施設」として捉えることもできる。

No.2だけに絞れば、ティオンからバックティで全長7,588ヤード、パー70。ドライバーの飛距離よりもショートゲームの精度が問われるコースであり、100切り以前のゴルファーには辛く、技術が向上してから再訪するほどその面白さが増すタイプのコースだ。

ドナルド・ロスが生涯をかけて磨き続けたこのコースには、ゴルフ設計の思想が純粋な形で刻まれている。タートルバックグリーンの一つ一つに立ち、次のショットの角度を考えるとき、プレーヤーは20世紀初頭のスコットランド人設計家の頭の中に迷い込む。それがパインハースト・No.2という旅の本質だ。