世界のゴルフコースランキングに「ロイヤル・メルボルン」の名前を見つけたとき、ヨーロッパや北米のコースに囲まれたその存在感は際立つ。オーストラリア・メルボルン郊外のサンドベルト地区に位置するこのコースは、設立以来一貫して「南半球のナンバーワン」と称され、しばしば「世界のトップ5」に名を連ねる。イギリスやアメリカのゴルフ文化の影響を受けながらも、独自の進化を遂げたオーストラリアゴルフの頂点に位置する場所だ。

サンドベルトとオーストラリアゴルフの中心地

メルボルンの南東、ブライトン、サンドリンガム、モーラビンにまたがる「サンドベルト」と呼ばれる地帯は、砂地の土壌と低い植生が続く一帯だ。ゴルフコースの建設に理想的なこの土地には、ロイヤル・メルボルンをはじめ、キングストン・ヒース、ヴィクトリア、メトロポリタン、コモランクなど、世界的に評価の高いコースが密集している。この一帯はゴルフファンの間で「オーストラリアのゴルフの聖地」とも呼ばれ、ゴルフ巡礼の旅先として多くの海外ゴルファーが訪れる。

ロイヤル・メルボルン・ゴルフ倶楽部の歴史は1891年に始まる。当初はメルボルン市内に近い場所に設立されたが、都市化の進行に伴い1901年に現在のサンドベルト地区へ移転した。1920年代にウエストコースとイーストコースの2コースが完成し、今日の姿へと発展した。

アリスター・マッケンジーの傑作

ロイヤル・メルボルンの名声を不朽のものにしたのが、スコットランド出身の設計家アリスター・マッケンジーだ。1926年にオーストラリアを訪れたマッケンジーは、ロイヤル・メルボルンのウエストコース設計を手掛けた。この設計はマッケンジーの代表作の一つとして高く評価されている。

マッケンジーの設計哲学は「自然の地形を最大限に活かすこと」だ。サンドベルト特有の砂地と起伏のある地形を巧みに利用し、バンカーを戦略的に配置して選手の判断力を試すレイアウトを生み出した。平坦に見えて実は微妙な傾斜を持つフェアウェイ、大きくうねるグリーン面、そして巧みに配置された砂のバンカー群——これらが組み合わさってロイヤル・メルボルン独特の難しさと美しさを形成している。

ウエストコースで特に称賛されるのが6番ホールだ。ドッグレッグしたフェアウェイの右サイドに深いバンカーが待ち構え、攻め際のラインを誤ると瞬く間にスコアが崩れる。見た目より遥かに戦略的思考が求められるホールだ。

グリーンはマッケンジー設計の白眉であり、その表面は複雑な多段構造を持つ。ピンに近づいてもグリーン面の傾斜を読み誤ればファーストパットはとんでもない距離を残す。世界最高峰のプロが「グリーンを攻略することの難しさ」を語るコースとして、ロイヤル・メルボルンは別格の扱いを受けている。

コンポジットコースとプレジデンツカップ

トーナメント開催時には、ウエストコースとイーストコースの各ホールを組み合わせた「コンポジットコース」が使われる。ウエストコース12ホールとイーストコース6ホールで構成されるこのコースは、両コースのベストホールを集めたものとされ、大会開催のたびに世界のトップ選手を苦しめてきた。

ロイヤル・メルボルンが国際的な注目を浴びるきっかけとなったのが、1998年に始まったプレジデンツカップ(米国チーム対インターナショナルチームの国際対抗戦)だ。1998年、2011年、2019年と3度の開催を経て、ロイヤル・メルボルンはプレジデンツカップとほぼ同義のコースとなっている。タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、アーニー・エルス、アダム・スコットといった超一流プレーヤーたちがここで激突し、コースの品格を世界に知らしめた。

2019年大会では地元オーストラリア出身のアダム・スコットがインターナショナルチームのキャプテンを務め、最終的にタイ(ドロー)という歴史的な結果に終わった。オーストラリアのゴルフファンにとって、ロイヤル・メルボルンは国民的な誇りだ。

グレッグ・ノーマンとオーストラリアゴルフの栄光

オーストラリアが生んだゴルフの英雄、グレッグ・ノーマンにとってもロイヤル・メルボルンは特別な舞台だ。1985年のオーストラリアン・オープンでノーマンはここで優勝し、その圧倒的な長打と戦略眼を誇示した。また、後にノーマン自身がコース設計家に転身した際、ロイヤル・メルボルンから多大な影響を受けたとたびたび語っている。

オーストラリアゴルフの底力を示す選手はノーマンだけではない。スティーブ・エルキントン、カーリー・ウェッブ、そしてアダム・スコットといった世界的トップ選手を輩出したオーストラリアにとって、ロイヤル・メルボルンはその文化と伝統の象徴的存在だ。

ゴルファーが知っておくべき理由

ロイヤル・メルボルンはプライベートクラブだが、外来プレーヤーへの開放日が設けられており、事前予約によって訪問することが可能だ。オーストラリアのゴルフシーズンは10月〜4月(南半球の春〜夏)が中心で、日本からの観光シーズンとも重なりやすい。

メルボルンを訪れてサンドベルトのコースを数日かけて回る「サンドベルトゴルフツアー」は、世界中のゴルフ愛好家が憧れる旅程だ。ロイヤル・メルボルンを中心に、周辺の名コースを一週間で巡れば、リンクスゴルフの本質に匹敵するサンドベルトゴルフの真髄を味わえる。

マッケンジーが砂地に刻んだグリーンの上で、三段パットに悩む贅沢な苦しみは、ゴルファーなら一度は経験すべきものだ。