スコットランドのリンクスコースはどれも個性的だが、ミュアフィールドには他と一線を画す評判がある。「最もフェアなリンクス」という呼び声だ。気まぐれなラフや出口のないバンカー、曲がりくねったルーティングによって選手を翻弄することを良しとする多くのリンクスコースとは対照的に、ミュアフィールドは実力を忠実に反映するという。その品格と公平性への信頼が、世界最高峰のゴルフトーナメントを繰り返し引き寄せてきた。

世界最古のゴルフ倶楽部が守る伝統

ミュアフィールドを語る上で外せないのが、コースを所有・管理する「ザ・オーナーシャン・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズ」の存在だ。1744年に設立されたこの倶楽部は、世界で最も古いゴルフ倶楽部として記録されている。当初はエジンバラ郊外のリースで活動していたが、1891年にイーストロージアンのガレインへ移転し、現在のミュアフィールドを本拠地とした。

エジンバラ郊外、ファース・オブ・フォース湾を見渡す丘陵地帯に位置するこのコースは、1892年の全英オープンから開催地として名を連ねる。以降、16回以上の全英オープンを開催しており、その数は開催地コースの中でも最多クラスに入る。コース自体は1891年にオールド・トム・モリスによって設計され、後にハリー・コルトが1920年代に大幅改修を行い、現在見られるホールのレイアウトの骨格が形成された。

コースの特徴とバンカー設計の哲学

18ホールは外側9ホールと内側9ホールが逆回りに絡み合う同心円状の配置になっており、これが独特の「フェア」を生む要因の一つだ。前半9ホールは時計回りに、後半9ホールは反時計回りにレイアウトされているため、どの組み合わせの風向きに対しても同じ不利を受け続けることがない。リンクスで猛威を振るう横風・向かい風の恩恵と打撃が均等に配分される設計は、コースの公平性への執念を感じさせる。

バンカーは深く、急斜面の土手を持つ典型的なリンクスタイプだが、ミュアフィールドのバンカーには重要な特徴がある。「逃げ場」が用意されているのだ。多くのコースのバンカーは罰則として機能し、選手の戦略の選択肢を奪うが、ここでは正確なショットを打てばバンカーを回避できるだけでなく、バンカーに入ってもリカバリーショットが可能なアングルが確保されていることが多い。これが「実力者が報われる」という評価の根拠だ。

フェアウェイは比較的広く、粗いラフとのコントラストはあるものの理不尽なペナルティは少ない。ただし、スコットランドの強烈な海風の日には話が変わる。無風のコンディションで難しいコースが風の日には手に負えない化け物になるのが、リンクスコースの本質だ。

ジャック・ニクラウスが初めて全英を制した地

ミュアフィールドをゴルフ史に刻んだ一つの出来事は、1966年の全英オープンにある。当時26歳のジャック・ニクラウスが、このコースで初めての全英オープン優勝を果たした。グランドスラム全冠を制したニクラウスにとって、ミュアフィールドは格別な思い入れのある場所となり、後に自身がオハイオ州に設計したコースを「ミュアフィールド・ビレッジ」と命名するほどの傾倒ぶりを見せた。

1972年の全英オープンもニクラウスが優勝し、このコースとの縁の深さを印象付けた。しかし翌1977年、今度は舞台がターンベリーに移り、ニクラウスとトム・ワトソンの間で伝説の対決が生まれる——それはまた別の物語だ。

ミュアフィールドで語り継がれるもう一人の英雄はトム・ワトソンだ。1980年の全英オープンでワトソンはここで優勝し、彼の通算5回の全英オープン制覇のうち1つをこの地で刻んだ。また2013年大会では63歳のワトソンが最終日に首位を行く劇的な場面があり、最終ホールで惜しくもボギーを叩いて逆転負けを喫したものの、ゴルフファンの心に深く刻まれた戦いとなった。

フィル・ミケルソンと2013年の歴史的優勝

2013年の全英オープンはミュアフィールドの近代史で最もドラマチックな大会の一つだ。最終日の風は猛烈で、午前のスタート組は壊滅的なスコアを叩いた。その中でフィル・ミケルソンは後半9ホールを5アンダーという驚異的なスコアで締め括り、逆転優勝を飾った。これはミケルソンにとって初の全英オープン制覇であり、通算4つ目のメジャータイトルとなった。

「ゴルフを変えた18ホール」とミケルソン自身が後に語ったこの大会は、困難なコンディションで実力を解放するメンタルの重要性を改めて世界に見せつけた。ミュアフィールドが持つ「フェアである」という特質が、その大逆転劇を可能にした舞台装置でもあった。

ゴルファーが知っておくべき理由

ミュアフィールドは一般開放日が限られているプライベートクラブだが、週2〜3日は外来プレーヤーを受け入れている。訪問には事前予約が必須で、ジャケット着用などのドレスコードが求められる。観光ゴルファーとしての格式ある訪問準備が必要だが、それを差し引いても余りある体験がここにある。

世界のゴルファーがミュアフィールドを目指す理由は、単に「有名コース」だからではない。750年以上の歴史を持つゴルフ発祥の地スコットランドで、最も洗練されたリンクスゴルフの本質を体験できる場所だからだ。フェアウェイに立ち、ファース・オブ・フォースの冷たい海風を顔で受けながら打つ一打は、ゴルフというスポーツの原点に触れる行為に他ならない。

バンカーに入れれば自分の責任、フェアウェイをとらえれば自分の功績——そのシンプルな因果関係を体感できるコースが、ミュアフィールドだ。