中東の砂漠に、なぜゴルフコースがあるのか。ドバイを初めて訪れたゴルファーが抱く疑問だ。見渡す限りの砂と灼熱の太陽、年間降水量が100mmにも満たないこの地に、年間を通じて青々とした芝を保つゴルフコースが存在する。エミレーツゴルフクラブは「砂漠のゴルフ」という概念そのものを体現し、現代の技術と大胆な意志が自然を超えた場所に生まれた奇跡のコースだ。

砂漠に誕生したゴルフの革命

エミレーツゴルフクラブが開場したのは1988年。これは中東で初めての全芝のゴルフコースとして歴史に刻まれている出来事だ。当時、中東のゴルフコースといえば砂(コンパクテッド・サンド)のフェアウェイが一般的だった。芝で覆われた「本物のゴルフコース」を砂漠に作るという発想は、当時としては革命的だった。

コースの建設には膨大な水と電力が必要とされた。フェアウェイとグリーンを維持するために毎日数百万リットルの水が消費され、そのほとんどは海水の脱塩水だ。夏場の最高気温が50度に迫るドバイで芝を生かし続けるために、灌漑システムと冷却技術の粋が集められている。単なるゴルフコースを超えた、人間の技術力と意志の産物がエミレーツゴルフクラブだ。

現在クラブには「マジリスコース」と「ファイカスコース」の2コースがあり、ツアー開催地として知られるのはマジリスコースだ。アラビア語で「集会所」「くつろぎの場所」を意味するマジリスという名前は、ドバイの文化への敬意を示している。

マジリスコースの特徴と設計

マジリスコースはオーストラリア出身の設計家カール・リマウスによって設計され、砂漠という環境を逆手に取ったレイアウトが特徴だ。コースの周囲にはドバイの高層ビル群が見え、フェアウェイの外側には砂漠が広がる。芝のコースと砂漠の境界線が至る所で接しており、フェアウェイを外れると瞬く間に砂の世界に迷い込む。これが独特のハザードとして機能している。

18ホールは全体的にフラットな地形を使い、水のハザードと深いバンカーを組み合わせた設計になっている。特に後半の数ホールは人工的な水辺を上手く活用し、リスクとリターードの判断を選手に迫る作りになっている。

クラブハウスはコース最大の名物の一つだ。砂漠の遊牧民ベドウィンのテント(バイト・アル・シャアル)を象った独特の建築デザインで、アラブ世界の伝統文化をモダン建築に昇華させたものだ。遠くから見ると砂漠に浮かぶ白いテントのように見え、その異国情緒はプレーが終わった後も長く記憶に残る。

ドバイデザートクラシックとタイガー・ウッズの独壇場

エミレーツゴルフクラブを世界的に有名にしたのは、1989年から毎年開催されてきた「ドバイデザートクラシック(現在のヒーロー・ドバイデザートクラシック)」の存在だ。欧州ツアー(DP World Tour)の開幕を飾る名物大会として、世界のトップ選手が毎年集うこの大会は、中東ゴルフの象徴となっている。

この大会で圧倒的な存在感を示したのがタイガー・ウッズだ。1999年、2001年、2006年、2008年、そして2013年と5回の優勝を誇り、「ドバイの砂漠はウッズのもの」と言われるほどの強さを見せた。特に2013年大会での優勝は、アキレス腱の問題を抱えながらの勝利であり、ウッズの勝負強さと砂漠への適性を改めて示すものだった。

ローリー・マキロイも複数回優勝しており、近年ではジョン・ラーム、ブライソン・デシャンボーといった強豪も優勝リストに名を連ねる。毎年2月に開催されるこの大会は、欧州ツアーの中でも最も注目度の高い一戦となっている。

砂漠のゴルフが持つ独特の魅力

砂漠でのゴルフには、芝コースとは異なる特有の体験がある。まず、フェアウェイを外れることへの心理的プレッシャーが大きい。砂の中に入ったボールはライが悪く、リカバリーに苦労する。加えて、ドバイの冬季(11月〜3月)は気温20〜25度と快適だが、乾燥した空気の中で砂塵が舞う日もあり、コンディションは変化しやすい。

砂漠特有の澄んだ空気の中、遠くにドバイの摩天楼を見ながら打つショットは、地球上で他にあまり存在しない景観だ。夕暮れ時、オレンジ色に染まった砂漠とシルバーに輝く高層ビルを背景にラウンドする時間は、ゴルファーとしての記憶に特別な一ページを加えてくれる。

ゴルファーが知っておくべき理由

ドバイはゴルフ観光の一大拠点として急速に発展しており、エミレーツゴルフクラブは外来プレーヤーへのアクセスが比較的容易だ。ドバイ国際空港から車で20分程度の距離にあり、高級ホテルが密集するドバイ中心部からのアクセスも良好だ。

プレーに最適な時期は11月〜3月で、日本からの直行便も充実しているため週末を使った弾丸ゴルフトリップも現実的だ。砂漠のオアシスでゴルフをするという経験は、ゴルフという競技が地球上のどんな環境にも根付く普遍性を持つことを実感させてくれる。

砂漠のど真ん中にティーグラウンドが存在し、そこから打ったボールが青い芝の上を転がる——その光景に立ち会うとき、人間の創造力とゴルフへの執念の強さを改めて感じるはずだ。