ロンドン郊外の緑の隠れ家
ロンドンから南西へ約30キロ。バークシャー州サニングデールの針葉樹と白樺の森の中に、英国ゴルフ文化の粋を集めたコースがある。サニングデール・ゴルフ・クラブ(Sunningdale Golf Club)だ。1900年に創設されたオールドコースと、1923年に加わったニューコースの2コースを擁し、英国インランド(内陸)コースの最高峰として世界中のゴルファーから尊敬を集めている。
海岸線のリンクスと並び、英国ゴルフの双璧をなすのがヒースランドコースだ。砂質の土壌にヒース(ヘザー)と呼ばれる紫色の植物が繁茂し、松や白樺が点在する独特の風景は、英国の内陸部にしか存在しないもの。サニングデールはそのヒースランドコースを代表する場所として、長い歴史の中でその地位を確立してきた。
コースを包む森は四季折々に表情を変える。秋は白樺が黄金色に染まり、春には紫色のヒースが咲き誇る。その美しさは競技の場を超えた芸術的な空間を作り出しており、訪れる者をプレーとは別の豊かな体験へと誘う。
ウィリー・パークとハリー・コルトの遺産
サニングデール・オールドコースの設計者はウィリー・パーク・ジュニアだ。全英オープンを2度制した名選手であり、コース設計家としても多くの名作を残したパークが、この地の砂質地形を活かして生み出したレイアウトは今も高い評価を受けている。
その後、英国コース設計の巨匠ハリー・コルトが改修と監修に関わった。コルトはウェントワース、ロイヤル・ポートラッシュなど数多くの名コースに携わった20世紀最大のゴルフ設計家のひとりだ。彼の設計哲学は「自然を尊重しながら戦略的深みを加える」というもので、サニングデールにもその思想が色濃く反映されている。
1923年開場のニューコースはコルト自身が設計した。オールドコースとは異なる味わいを持つニューコースは、より現代的な戦略性を備えながらも、ヒースランドの美しさを最大限に活かした設計だ。オールドとニュー、2コースの組み合わせは一日中——あるいは複数日にわたって——ゴルファーを飽きさせることがない。
ボビー・ジョーンズの「完璧ラウンド」
1926年、ゴルフの歴史に刻まれた瞬間がサニングデールで生まれた。アマチュアゴルファーとして史上最高の選手のひとりと称されるボビー・ジョーンズが、全英オープンの予選でオールドコースを66打でまわったのだ。この66というスコアは単に低い数字というだけでなく、各ホールの質、ショットの精度、コースマネジメントの完璧さという点で、同伴競技者や観衆を驚嘆させた。
当時の記録によれば、ジョーンズはこのラウンドで33のパーと33のバーディーを取り分け、66のスコアを達成した。全ホールで3と4だけを使い続けるという、まるで計算されたような完璧な数字の並び。後にジョーンズ自身がこのラウンドを「自分のゴルフ人生で最も完璧なラウンド」と回顧したという記録が残っている。
この伝説的なスコアが生まれた場所であることが、サニングデールをゴルフ史において特別な位置に押し上げている。現代でも「サニングデールでプレーすること」は、英国ゴルフの最高の体験のひとつとして語られる。ジョーンズが立った1番ティ、彼のショットが降り立ったフェアウェイ——その同じ土地を自分の足で歩くことに、特別な意味を見出すゴルファーは多い。
英国会員制倶楽部の文化と精神
サニングデールは厳格な会員制を維持する英国伝統の倶楽部だ。一般のビジターもプレーが可能だが、事前の予約と紹介状が必要で、プレーの機会は限られている。このアクセスのしにくさは、英国伝統倶楽部の文化的背景を反映したものだ。
英国の会員制ゴルフ倶楽部において、メンバーシップは「入会する」というより「受け入れられる」という性質を持つ。経済的条件だけでなく、人格的な評価と既存会員による推薦が必要だ。これは閉鎖性として批判されることもあるが、倶楽部内の一体感と品格を長年にわたって維持してきた要因でもある。
クラブハウスは落ち着いた石造りの建物で、内部には古い写真や歴史的な資料が飾られている。ダイニングルームでの昼食は倶楽部体験の不可欠な要素であり、ラウンド前後の会話と食事がプレーと同等の意味を持つ。「ゴルフは18ホールで終わらない」という英国ゴルフの精神がここに凝縮されている。
インランドコースの最高峰として
サニングデールをリンクスコースと比較することに意味はない。それぞれが異なるゴルフの美学を体現しているからだ。リンクスが風と海と砂丘のゴルフなら、サニングデールは静けさと森と英国的な思慮のゴルフだ。
ヒースランドの赤茶けた土壌と松の木の香り、秋の朝霧に包まれたフェアウェイ、石造りのクラブハウスから見渡す穏やかな英国の風景——これらが一体となって、サニングデールという他にない体験を作り上げている。
ロンドンから1時間以内というアクセスの良さも見逃せない。英国ゴルフ旅行の計画にサニングデールを入れることで、リンクスとは異なるもうひとつの英国ゴルフの真髄に触れることができる。100年以上変わらないその姿で、コースは今日も英国紳士のゴルフを体現し続けている。