「世界で最も美しいゴルフコース」という称号は、多くの名コースをめぐって語られてきた言葉だが、サイプレス・ポイントと聞けば多くの専門家が異論を唱えない。カリフォルニア州モンタレー半島のサイプレス・ポイント・クラブ、このコースにはゴルフコースが持ちうる美しさのほぼすべてが凝縮されている。太平洋の青、モントレーサイプレスの緑、白い波しぶき、そして岩礁に刻まれたホール群——それらが一体となった光景は写真や映像では伝えきれない類のものだ。

アリスター・マッケンジーが選んだ土地

1928年、ゴルフコース設計の巨匠アリスター・マッケンジーはモンタレー半島の太平洋側に広がる土地を見て、「自分のキャリアで最も素晴らしい敷地を見つけた」と感じたと言われる。マッケンジーはその後オーガスタ・ナショナルとプレサティエンポを設計するが、サイプレス・ポイントはその直前に手がけた作品だ。

コースは1929年に開場し、マッケンジーの代表作として即座に世界の注目を集めた。設計の特徴は「自然の地形を生かす」というマッケンジーの哲学が最大限に発揮されている点にある。モントレーサイプレスの林を縫うように内陸ホールが続き、コースが太平洋岸へと近づくにつれて景観は劇的に変化する。岩礁と砂丘、荒波と海風——前半と後半では別のコースを回っているような多様性がある。

15・16・17番ホール——海越えの三連作

サイプレス・ポイントを語る上で避けて通れないのが、15番から17番にかけての太平洋越えホール群だ。この3ホールは「ゴルフ史上最もスペクタクルなホール群」として頻繁に取り上げられる。

15番(パー3、139ヤード)は短いが油断大敵だ。グリーンの左側は太平洋に面した崖であり、わずかに引っかかったショットは波に飲まれる。16番(パー3、233ヤード)はその壮大さにおいて別格で、233ヤードの海越えショットを求められる。ティーからグリーンの間は太平洋の入江が広がり、強い風が吹けば240ヤード以上の飛距離が必要になることもある。グリーンは崖の上に位置し、左右を激しい波に削られた岩礁が囲む。それでもレイアップを選べる「逃げ道」が右側にある。安全策か、ロマンか——その選択がゴルファーの性格を映し出す。

17番(パー4)は16番の感動を引き継ぐように、再び太平洋を望むロケーションで続く。このコースを訪れたゴルファーの多くが「一生忘れられない3ホール」と語る。

非公開ゆえの伝説性

サイプレス・ポイントが特別な場所であり続けるもう一つの理由は、その閉鎖性にある。会員制を厳格に守る非公開クラブであり、一般への開放は行っていない。PGAツアーのペブルビーチプロアマには1977年まで含まれていたが、PGAとの関係が終了した後は公式トーナメントも開催されなくなった。

これは商業主義とは真逆の姿勢だ。会員はおよそ250名とも言われ、その顔ぶれは実業界・芸術界・スポーツ界の名士で占められる。会員の紹介なしにプレーする手段は存在せず、それゆえにプレーできた人間は「世界で最も幸運なゴルファーの一人」と称される。

コースが観光地化されないことで、マッケンジーが作り上げた原風景はほぼ手つかずのままに保たれている。過度な整備も商業看板もなく、ゴルフという競技が自然の中に本来あるべき形を保ち続けている。その静けさと完全性が伝説に磨きをかける。

ペブルビーチとモンタレー半島の宝

サイプレス・ポイントの近隣には世界的名コースが集中している。ペブルビーチ・ゴルフリンクスはその代表格で、全米オープンを繰り返し開催するパブリックコースとして世界中からゴルファーを集める。スパイグラス・ヒル、モントレー・ペニンスラ・カントリークラブなど、同じ半島に複数の名コースが存在するゴルフの聖地がモンタレーだ。

ペブルビーチは誰でもプレーできるがサイプレス・ポイントは会員のみ——この対比がモンタレー半島のゴルフ事情をユニークにしている。一方は世界中から訪問者を歓迎し、もう一方は静寂の中に鎖をかける。どちらのコースも世界最高水準にある事実は変わらない。

サイプレス・ポイントを遠くから望む場所、17マイルドライブという景勝ルートが一般に開放されており、ゴルフ場の外周を車で走りながらコーストラインの景観を楽しむことはできる。その車窓から見えるサイプレスの木立と白い波しぶきが、このコースへの想いをかえって募らせる。

「最も美しい」という言葉の意味

ゴルフコースの美しさとは何か。難易度でもなく、長さでもなく、歴史の重みだけでもない。コースと自然環境が不可分に結びつき、そこに立つことで人間が自然の中の小ささを感じる——そういう体験の質のことだ。

サイプレス・ポイントの16番ティーに立って、233ヤード先のグリーンに向かってクラブを構えるとき、ゴルファーは波音と風の中に完全に孤立する。それが「世界で最も美しいコース」という称号の、最も正確な意味だと言える。

プレーできないからこそ、想像の余地がある。その余地がサイプレス・ポイントをゴルファーにとっての永遠の憧れとし続ける理由でもある。